人と比べて落ち込むのをやめたい。
そう思っているのに、SNSを開けば、同世代の活躍や楽しそうな暮らしが目に入る。
友人の結婚や出産、仕事での昇進、きれいな部屋、整った見た目、充実した休日。
本当なら「よかったね」と思いたいのに、素直に喜べないこともあるのではないでしょうか。
それどころか、
「私は何をしているんだろう」
「同じ年齢なのに、ずいぶん差がついた気がする」
「自分だけが取り残されている」
そんな気持ちになり、スマートフォンを閉じたあとも落ち込みが残ってしまった経験もあるかもしれません。
人と比べないほうが楽なのは、きっと自分でもわかっているはず。
でも、「比べるのをやめよう」と言い聞かせるだけでやめられるなら、ここまで苦しくはなっていないでしょう。
人と比べてしまうときは、自分を責めるより、まず「なぜ比較が止まらなくなるのか」を知ることが大切です。
この記事では、人と比較してしまう原因や苦しい気持ちを抱えたときの対処法、考え方のコツを解説します。
人と比べて落ち込むのは、あなただけではない

人は、自分の状態や立ち位置を確かめるために、周囲を見ます。
仕事がうまくいっているのか。
自分の収入は多いのか少ないのか。
年齢に合った暮らしができているのか。
見た目は周囲からどう見えるのか。
自分だけでは判断しにくいことを、他人と比較することで確認しようとします。
そのため、人と比べてしまうこと自体は、心が弱いからでも、性格が悪いからでもありません。
比較は誰にでも起こり得るものです。でも比べた結果、必要以上に自分を傷つけてしまう人もいます。
友だちの状況やSNSを見て、
「それに比べて私は能力がない」
「今まで何も積み上げてこなかった」
「これからもずっと変われない」
と、自分の人生全体の評価にまで話が広がってしまう。
人と比べて落ち込んでいるときは、比較して感じたことよりも、自分に向けている言葉によって深く傷ついていることがあります。
他人と比較してしまう主な原因

では、どうして人と自分を比べてしまうのでしょうか。主な原因を解説します。
現状や未来に不安がある
人と比べてしまうと、「私に自信がないからだ」と考えがちです。
もちろん、自分への評価が下がっているときは、周囲の成功が気になりやすくなることがあります。
ただ、人と比べる原因はそれだけではありません。
自分の進む方向がわからないとき、将来に不安があるとき、仕事や生活に納得できていないときにも、他人の人生が必要以上にまぶしく見えることがあります。
つまり、比較による落ち込みは、単に自己肯定感が低いという話ではなく、
「今のままで大丈夫なのか」
「このままの生活でやっていけるのか」
「本当は何かを変えたいのではないか」
という不安が表面に出ているのかもしれません。
自分の不足ばかりを探している
比較して落ち込むとき、私たちは公平な条件で比べているとは限りません。
相手については、目に見える成果や魅力的な部分だけが見える。
その反面、自分に関しては、うまくいかなかった経験、迷っている気持ち、疲れて動けなかった日まで見えている。
相手の完成した部分と、自分の不安定な途中経過を比べれば、自分のほうが劣っているように感じるのは不思議ではありません。
けれど、それでは、最初から自分に不利な条件で自分を採点しているようなものです。
SNSで他人の「見せたい部分」に触れ続けている
SNSには、うれしかった出来事、うまくいった仕事、きれいに撮れた写真、楽しかった旅行などが投稿されます。
わざわざ、何もできなかった休日や、眠れなかった夜、仕事で失敗した瞬間まで毎回投稿する人は多くないでしょう。
もちろん、SNSにある幸せがすべて嘘というわけではありません。
ただし、そこに映っているのは、その人の生活の一部です。
それでも何人もの「うまくいった一部」を続けて見ていると、世の中の人はみんな順調で、自分だけが停滞しているように感じることがあります。
比較で苦しくなる場面やきっかけを把握し、SNSとの接触を調整することは、現実的な対処のひとつです。
誰かを見て強く落ち込むとき、その人が持っているものを、自分も欲しいと思っていることがあります。
自由な働き方をしている人が気になるなら、自分も今の働き方を変えたいのかもしれない。
楽しそうな友人関係が気になるなら、自分も安心して話せる相手を求めているのかもしれない。
外見が整っている人を見て落ち込むなら、自分の見た目を責めたいのではなく、もう少し自分を丁寧に扱いたいのかもしれない。
比較の中には、劣等感だけではなく、自分の希望が隠れていることもあります。
「人と比べないようにしよう」では解決しにくい

人と比べて苦しいとき、
「人は人、自分は自分」
「あなたにはあなたの良さがある」
「もっと自分を好きになろう」
と言われることがあります。
間違った言葉ではありません。
ただ、落ち込んでいる最中に聞いても、心に入ってこないことが多いはずです。
きれいごとにしか聞こえず、そんなふうに捉えてしまうことに自己嫌悪を感じる人もいるでしょう。
今の自分を好きになれないから苦しいのに、「自分を好きになろう」と言われると、できないことがもう一つ増えたように感じてしまう。
比べないように意識するほど、比較している自分に気づきやすくなり、「また比べてしまった」と自己嫌悪が増えることもあります。
必要なのは、急に前向きになることではありません。
前向きになろうとすることが、自分を追い立ててしまうこともあります。
人と比べて落ち込んだときの対処法

人と比べてしまい、どうしようもないほど落ち込んでしまうこともあるでしょう。
そんなときのために知っておきたい6つの対処法をご紹介します。
何と何を比べているのか具体的にする
「私はあの人より劣っている」
という考えは、大きすぎて対処しにくいものです。
人間全体として負けているように感じますが、実際に気になっているのは、一部分かもしれません。
たとえば、
「あの人より仕事ができない」ではなく、「相手は人前で説明するのがうまい」
「あの人の人生は充実している」ではなく、「休日に出かける相手がいることがうらやましい」
「あの人のほうがきれい」ではなく、「肌や髪に手をかける余裕があるように見える」
というように、比較している内容を具体的にします。
何に傷ついたのかがわかると、自分の人生すべてを否定しなくて済みます。
事実と、自分が後付けした意味を分ける
人と比べて落ち込んでいるときは、事実と想像が混ざりやすくなります。
「友人が昇進した」は事実です。
「私は評価されていない」は、事実かもしれませんし、そうではないかもしれません。
「私はこれからも成功できない」は、今の時点では結論を出せないことです。
友人の結婚は事実でも、「自分はこの先ずっと一人だ」と決まったわけではありません。
誰かの成功を見た直後は、自分に関する悲観的な結論を出さない。
それだけでも、落ち込みを必要以上に大きくせずに済みます。
見ると苦しくなるものから一度離れる
SNSを見てつらくなるなら、無理に見続ける必要はありません。
フォローを外すほどではなくても、ミュートする。
アプリをホーム画面から外す。
見る時間を決める。
疲れている夜には開かない。
これは逃げではなく、入ってくる情報を調整する行動です。
今はスマートフォンを開けば、どんどん情報が流れ込んできます。
「気にしない自分にならなければ」と耐え続けるより、目に入る回数を減らすほうが早く楽になるかもしれません。
特に、仕事で失敗した日や、将来への不安が強い日、眠れていない日は、普段なら流せる投稿にも傷つきやすくなります。
比較しやすい自分をなんとかしようとするより、比較が激しくなりやすい状況を避けるほうが現実的です。
比較から見えた「欲しいもの」を考える
「あの人がうらやましい」
と思ったら、何がうらやましいのかを考えてみます。
誰かを見て強く落ち込むとき、その人が持っているものを、自分も欲しいと思っていることがあります。
自由な働き方をしている人が気になるなら、自分も今の働き方を変えたいのかもしれない。
楽しそうな友人関係が気になるなら、自分も安心して話せる相手を求めているのかもしれない。
外見が整っている人を見て落ち込むなら、自分の見た目を責めたいのではなく、もう少し自分を丁寧に扱いたいのかもしれない。
比較の中には、劣等感だけではなく、自分の希望が隠れているケースも多いです。
無理に前向きになる必要はありませんが、気持ちが少し落ち着いたら、嫉妬のなかに自分が欲しいと思っているものがないか考えてみましょう。
欲しいものがわかったら、それを自分の生活に少しだけ取り入れる方法を考えます。
転職を決めるほどではなくても、求人を見る。
気になっていた場所へ一人で行く。
やってみたいと思っていた習い事を始めてみる。
外見を大きく変えなくても、髪を整える時間をつくる。
比較を自分を責める材料にするのではなく、今の不満を見つける情報として使ってみてください。
今の自分に必要な行動を一つだけ決める
人と比べて落ち込むと、「早く追いつかなければ」と焦ります。
資格を取る。
転職する。
運動する。
貯金する。
恋人を探す。
美容も頑張る。
一度にすべてを変えようとして、結局何もできず、さらに自分を責めてしまいがちです。
けれど、そもそも他人の人生に追いつく必要はありません。
落ち込むと、誰かに遅れを取っていると感じやすいですが、そうとも限りません。
こういうときは、今の自分が困っていることを、一つだけ軽くする行動を考えます。
仕事が不安なら、これまでの経験を書き出す。
お金が心配なら、まず固定費を確認する。
孤独がつらいなら、信頼できる人に短い連絡をする。
見た目に自信がないなら、睡眠やヘアケアなど、できそうなところから整える。
一つ行動しても、急に自信がつくわけではありません。
それでも、他人を見続ける時間から、自分の生活を動かす時間へ戻ることはできます。
比較している自分まで嫌わない
人と比べたとき、相手への嫉妬よりも、
「友人の幸せを喜べない自分は嫌な人間だ」
「こんなことで落ち込む私は面倒くさい」
という自己嫌悪のほうが苦しくなることがあります。
人の幸せを見て、自分の不足に気づけば、複雑な気持ちになることはあります。
うれしい気持ちと、うらやましい気持ちが同時にあるのはおかしいことではありません。
多かれ少なかれ、そういう気持ちは誰でも持つものです。
素直に喜べない日があったからといって、その人を大切に思っていないとは限りません。
今は自分に余裕がないのだと考えて、反応をすぐに人格の問題へ結びつけないことが大切です。
比較する対象を「過去の自分」に変えなくてもいい
人と比べるのをやめる方法として、「他人ではなく過去の自分と比べよう」と言われることがあります。
役に立つ人もいますが、いつでも有効とは限りません。
以前より仕事ができなくなった。
昔より体力が落ちた。
前はもっと行動できていた。
そんな実感がある場合、過去の自分もまた、今の自分を責める材料になるからです。
無理に成長を探さなくても構いません。
昨日より前進しているかではなく、
「今の自分は何に疲れているのか」
「これ以上つらくならないために何が必要か」
を考えるだけの日があってもいい。
人生には、進む時期だけでなく、減った体力や気持ちを立て直す時期も必要です。
人と比べてしまう場面別の考え方

人と比べてしまう場面は人それぞれですが、代表的な場面での考え方を見てみましょう。
仕事や収入を比べてしまう
同世代の昇進や転職、収入を知ると、自分だけ遅れているように感じるかもしれません。
ただ、仕事には、収入以外にも、勤務時間、責任の重さ、通勤、職場環境、生活との両立など、外からは見えにくい条件があります。
相手の肩書だけを見て、自分の働き方全体を失敗と決める必要は全くありません。
それでも今の仕事に不満があるなら、「あの人より下だから」ではなく、「自分は今後どのように働きたいか」を考えるきっかけにするとよいでしょう。
結婚や家庭を比べてしまう
結婚、出産、家族との暮らしは、周囲と差を感じやすいテーマです。
年齢が近い人の生活が変わると、自分だけ同じ場所に残ったように感じることもあります。
ただ、結婚した人が正解で、していない人が遅れているわけではありません。
だからといって、「一人でも幸せ」と無理に思い込む必要もありません。
誰かと暮らしたいのか。
結婚という形を望んでいるのか。
周囲から取り残されるのが怖いのか。
不安を一つずつ分けることで、自分が本当に望んでいるものが見つかりやすくなります。
自分の望みが少しでも見えてくると、周囲との違いではなく、自分がこれからどうしたいのかを考えやすくなります。
見た目を比べてしまう
外見の比較は、理屈だけでは止めにくいものです。
写真や鏡を見るたびに欠点を探していると、「もっときれいになりたい」という気持ちが、「今の自分には価値がない」という考えに変わってしまうことがあります。
美容を楽しむことと、自分を否定し続けることは別です。
変えたいところがあるなら、変えるための方法を探してもいい。
ただし、その日の写真写りや肌の状態だけで、自分全体の価値まで決めないことが大切です。
何をしても落ち込みから抜け出せないとき
人と比べて落ち込むことは、誰にでも起こり得ます。
ただ、落ち込みが長く続き、眠れない、食欲がない、仕事や家事ができない、人に会えないといった状態になっている場合は、比較癖だけの問題ではないかもしれません。
自分で整えようとしてもうまくいかないときは、信頼できる人や、カウンセラー、医療機関などへ相談する方法があります。
「もっと大変な人がいるから」と、自分のつらさを他人と比べる必要はありません。
日常生活に支障が出るほど苦しい状態が続く場合は、一人で抱え込まないことが大切です。
人と比べてしまうときのよくある悩み
人と比べてしまうのは性格が悪いから?
そうではありません。
自分の立ち位置を確かめたいときや、将来に不安があるとき、疲れて余裕がないときには、他人の状況が気になりやすくなります。
比較したことよりも、そのあと自分や相手を傷つける行動を取らないことが大切です。
人と比べない人になるにはどうすればいいんだろう
まったく比べない状態を目指すより、比較が始まったことに気づき、自分を責める考えを広げすぎないようにしましょう。
見ると苦しくなる情報から離れたり、比較によって何を欲しいと感じたのかを整理したりすることで、落ち込みから戻りやすくなります。
SNSはやめたほうがいいのかな?
完全にやめる必要はありません。
ただし、見るたびに落ち込むアカウントをミュートする、利用時間を決める、疲れているときは開かないなど、自分に合った距離を取る方法はあります。
SNSを楽しむことよりも、見たあとに自分を嫌いになる時間のほうが長いなら、使い方を見直してもいいでしょう。
友人の幸せを喜べない自分が嫌だ
友人の幸せを喜びたいという気持ちと、自分の状況に落ち込む気持ちは、同時に存在することがあります。
身近な友人だからこそ、自分との違いを強く感じてしまうこともあるでしょう。
すぐに心から喜べないからといって、その人を大切に思っていないとは限りません。
相手に伝えたい気持ちがあるなら、今できる範囲で「おめでとう」と伝えてもいいでしょう。
そのあとに残る寂しさやうらやましさまで、無理に消す必要はありません。
「自分にも欲しいものがあるから、今は苦しいのかもしれない」と考え、自分の気持ちも置き去りにしないことが大切です。
人と比べても、自分の生活へ戻ってくればいい
人と比べる癖を、完全になくすのは簡単ではありません。
これからも誰かの仕事、収入、外見、暮らしを見て、落ち込む日はあると思います。
そのたびに、「比べてはいけない」と自分を追い込む必要はありません。
何がうらやましかったのか。
何に不安を感じたのか。
今の生活で、何を少し変えたいのか。
そこまで考えられたら、比較はただ自分を傷つけるだけのものではなくなります。
人と比べない人になることよりも、比べて落ち込んだあとに、自分の生活へ戻ってこられることが大切です。
誰かの人生を見て焦った日は、すぐに前向きになろうとしなくても構いません。
その感情が少し落ち着いたら、他人の人生ではなく、自分が今日をどう過ごしたいかを考えてみてください。
